当プロジェクトの特徴

子ども達の自己肯定感とソーシャル・スキル・トレーニング

 医学の世界では、虐待に遭った子ども達の多くは愛着不全や前頭葉発育不全によって思考・学習の障害や対人的・社会的能力の支障が生じており、さらにはフラッシュバックにより騒いだり暴力的になったりする反応的行動を起こすことから、まずは、愛着の再獲得と感情の言語化を図り、内省・対象化を進めていくことが不可欠であると言われています

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 そこで、昨今、ソーシャル・スキル・トレーニング(以下、SST)のような、いわゆる感情リテラシー(スキル)を高めるべく取り組みが一部の児童養護施設でも実施されています。

虐待児にSSTを適用すること

 SSTは発達障害を持つ子ども達に多く適用され、効果を発揮していると考えられますが、被虐待経験のある子ども達にとって適合させるには、弊団は、これまでの経験から、再考の余地があると考えております。

 とある医師の方から「自分がどう思うかに関係なく、(トライアンドエラーによる)トレーニングを受けたことを実生活で実践するのが良い」という考えを頂戴したこともありました。ところが、実際、子ども達はそのような考えや態度で接してくる大人に対しては、人としてよりも医師という立場や何らかしら不安・不信を感じてしまい、結局心を開くことはなく、解決には至らなかったという結果となることもあるようです。

 また、とある心理士さんから「SSTを実施しても、子ども達は大人の望むことを答えようとしてしまう」、つまり、自分の気持ちとは全く関係なく「こう答えれば良い」ということを納得しているわけではなく、とりあえずそのような答えをしておけば事が済むというような態度で臨んでしまい、結局、トレーニングが続かないというお話をいただくことがあり、それは弊団も納得・共感するものがあります。

 以上のことからもSSTは(発達障害を持つ子ども達に効果を発揮すると考えられますが)、被虐待経験のある子ども達にとって、その有効性は相対的に高いとは言い難い、と考えます。

 

被虐待児にはSST以前にすることがある

 そもそも、子ども達の「感情」は、地域周辺の人達(親、兄弟・姉妹、友達、ママ友、近所の大人達など)との「情愛」ある関わりの中で様々な経験をし、成長していきます。昨今は、地域や生活環境も以前と変わり、子ども達における人との繋がりが少なくなり「感情」の成長機会も減ってきていると考えられます。ましてや、被虐待経験のある子ども達はこのような経験は極端に少ないと言えます。

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 弊団は、SSTを「行動を考える」ものと位置付けるとすると、その修得には「感情を考える」ことができている前提であることから、「感情」形成に課題の本質があると考えるに至ったのです。

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治療とトレーニングの他に必要な「経験」

 弊団は、被虐待経験のある子ども達に必要なのは、自身を受けいれてくれる大人が見守る中「感情と言葉を結び付ける」経験だと考えております。虐待を受けていた時、本来なら、言語にならない段階から親とのコミュニケーションを図りつつお互いの感情や気持ちのやり取りを図っていたはずの経験が乏しく、言語を覚えてきても、自分の感情や気持ちを伝えることはできない(受け入れてくれない)状態にあるはずです。

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まずは「感情と言葉を結び付ける」経験を

 弊団は、日常で感じること、特に五感と感受を思考しそれを言葉に結びつけることがまず重要であると考えています。信頼できる大人が見守る中、正解を求められることなく、自身の感情を言葉に結びつけ、そこから始まる試行錯誤的な経験の積み重ねが、子ども達の心の土台づくりとなります。

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 児童養護施設で暮らす子ども達、里親さんの下で暮らす子ども達に「とーかん日記」や「こころ日記」・「かんじょうきばんのーと」推進を、皆様に’ご紹介させていただいております。